【肩が痛い人へ】烏口上腕靭帯の解剖と治療の考え方

肩の動きや安定性を支える重要な靭帯、烏口上腕靭帯。聞き慣れない名前かもしれませんが、肩関節のトラブルに関わることが多く、特に可動域制限や痛みの原因となることも。この記事では、烏口上腕靭帯の基本的な解剖や周囲の筋肉との関係、臨床でどう活かせるかをわかりやすく解説していきます。

目次

烏口上腕靭帯と周囲の解剖

烏口上腕靭帯ってどんな靭帯?

烏口上腕靭帯は、肩甲骨にある烏口突起という突き出た部分から、上腕骨の大結節小結節に向かって伸びている靭帯です。肩を支えるように位置していて、周囲の筋肉ともかなり密接に関わっています。

烏口上腕靭帯の特徴

  • 起始と付着
    • 起始:肩甲骨の烏口突起
    • 付着:上腕骨の大結節と小結節
  • 周囲との位置関係
    • 大結節は少し上の方に、小結節は下の方にあり、烏口上腕靭帯がその間を結ぶように伸びています。
  • 周辺の筋肉と接触
    • 大結節側では棘上筋、小結節側では肩甲下筋と接触しています。

「靭帯」と聞くとただの硬い繊維と思われがちですが、この烏口上腕靭帯は周囲の筋肉や組織と滑らかに動くのが特徴。これが、肩の安定性や動きのスムーズさを保つポイントなんです。

棘上筋と肩甲下筋の基本的な解剖

棘上筋(Supraspinatus)

棘上筋は肩甲骨の棘上窩(肩甲骨の後面、肩甲棘の上部にあるくぼみ)に位置しています。この筋肉は、いわゆる「回旋腱板(ローテーターカフ)」を構成する一部で、肩関節を安定させる重要な筋肉の1つです。

  • 起始:肩甲骨の棘上窩(肩甲棘の上側の部分)
  • 停止:上腕骨の大結節(上部)
  • 機能
    • 肩関節の外転を補助(主に最初の15度)
    • 肩関節の動きを安定させ、上腕骨が脱臼しないように保持

臨床的ポイント
棘上筋腱炎や損傷は、肩インピンジメント症候群腱板断裂の主要因。これが原因で烏口上腕靭帯との滑走障害が起きることもあります。

    肩甲下筋(Subscapularis)

    肩甲下筋は肩甲骨の前面(肩甲下窩)を覆う大きな筋肉で、これも回旋腱板の一部です。肩関節の内旋において主要な働きを持つ筋肉です。

    • 起始:肩甲骨の肩甲下窩(肩甲骨の前側全体に広がる面)
    • 停止:上腕骨の小結節
    • 機能
      • 肩関節の内旋
      • 上腕骨を肩甲骨の関節窩に押し付けることで、肩関節の安定性を保つ

    臨床的ポイント
    肩甲下筋の過緊張や炎症は、肩の内旋制限や痛みの原因となることが多いです。烏口上腕靭帯と接触しているため、動きの悪化が摩擦や炎症を引き起こします。

    烏口上腕靭帯と周囲の筋肉との関係

    棘上筋との関係

    • 棘上筋は肩の上方に位置していて、肩関節を外転(腕を横に挙げる動き)する筋肉。
    • この筋肉は上腕骨の大結節に付着していて、烏口上腕靭帯と隣り合わせです。

    臨床でよくある話:
    棘上筋が硬くなったり炎症を起こすと、烏口上腕靭帯との滑走が悪くなり、摩擦や炎症が起きることがあります。これが肩の痛みや動きの悪さの原因になりやすいです。

    肩甲下筋との関係

    • 肩甲下筋は肩甲骨の前側にあり、肩関節を内旋(腕を内側にひねる動き)する筋肉。
    • 小結節に付着しているので、こちらも烏口上腕靭帯と密接な関係。

    臨床でよくある話:
    内旋動作が多い人(例えば野球のピッチャーや日常で腕を前に出す動きが多い人)では、肩甲下筋が硬くなりやすいです。その結果、烏口上腕靭帯との間で摩擦が起きて肩の動きがスムーズにいかなくなることも。

    治療をする際の考え

    肩の痛みや動きの悪さを診断・治療する際には、肩関節の動きとその際に関連する組織の状態を詳細に評価することが重要です。特に、烏口上腕靭帯は肩関節の外旋や内旋と密接に関連しており、その動きの特性を理解することで、痛みや動きの制限の原因を見極めやすくなります。

    肩関節の動きと烏口上腕靭帯の関係

    1. 外旋時の烏口上腕靭帯の反応
      • 肩関節を外旋(腕を外側に回す動き)させると、烏口上腕靭帯は緊張します。この動きでは靭帯が引っ張られるため、周囲の筋肉や靭帯との摩擦が増加し、滑走障害がある場合には痛みを引き起こします。
      • 評価のポイント:
        外旋時に特に以下の症状が見られる場合、烏口上腕靭帯のトラブルが疑われます。
        • 動きの制限(外旋角度が低下している)
        • 鈍い痛みや鋭い痛み
        • 外旋を途中まで進めると筋肉が緊張して「詰まる感じ」
        • 動作をスムーズに行えない
    2. 内旋時の烏口上腕靭帯の反応
      • 肩関節を内旋(腕を内側に回す動き)させると、烏口上腕靭帯は弛緩します。このため、外旋時に比べて靭帯への負担が軽減され、動きがスムーズになることが多いです。ただし、周囲の筋肉が硬くなっている場合は、動きに制限が生じる可能性もあります。
      • 評価のポイント:
        内旋時に次の症状が見られる場合、肩甲下筋や烏口上腕靭帯との相互作用に問題がある可能性があります。
        • 内旋の終末可動域での痛み
        • 内旋動作の開始時に肩の違和感や硬さを感じる

    肩の痛みや動きの悪さは、日常生活に大きな影響を与えます。特に「腕を上げると痛い」「動きがスムーズじゃない」「違和感が続いている」と感じる場合、それは肩の靭帯や筋肉の滑走障害が原因かもしれません。放置すると痛みが悪化したり、可動域がさらに制限されてしまう可能性もあります。

    専門的な診断と適切な治療を受けることで、痛みを和らげ、肩の動きを取り戻すことができます。肩の症状には、原因をしっかり見極めた上でのリハビリや施術が必要です。「この痛み、放っておいても治るかな?」と思っている方こそ、早めの受診をおすすめします!

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